日本酒ってンマイヨネー、って事を適当に書きます。
普通の日本酒
「美味い日本酒」を話題にしようとすると大体最初に三増酒による誤解と偏見の話が来るんですが、そこはもやしもんでも読んどいてください。ワインだって紙パックのは美味くないし、安酒は安酒の味ってだけだと個人的には思います。
余計な添加物が入っていないちゃんとした日本酒(というかそれが普通の日本酒なのですが)は美味しいですし、値段も手頃。四合瓶(720ml)で1500円ぐらい出せれば十分美味い酒が飲めます。だから、もし日本酒が不味いっていう人が居たら自分が美味いと思うのを飲ませてみりゃ済む話なんですよ。いち消費者が偏見云々を語るだけ無駄。語る前に飲め。そして飲ませろ。話はそれからだ。
四合って少ないようにも思えますが、ビールのようにガブガブ飲めるもんでもないので、意外と長い間楽しめます。一升瓶(1.8l)は四合瓶の2.5倍の量に対して価格は2倍どまりなのが普通で、よりコスパが良くなります。でも俺は四合瓶で常時5~6種類ぐらいの酒を冷蔵庫に置いておくのが好きですね。一升瓶だとかなりスペースを食うし、飲み切って新しい酒を試してみるまでにも時間がかかるので。
買い方
スーパーではなく、酒屋さんで買いましょう。でっかい冷蔵庫に一升瓶を沢山並べているようなとこで。単純に品揃えの良い店はそれなりに酒蔵とのつながりもありますし、こだわりもあると考えて良いと思います。あとはデパ地下とかでもちゃんとした日本酒は買えますし、ネット通販には地酒を売りにしたショップがごまんとあります。
東京だったらはせがわ酒店とか行っとけばまずは間違いないと思いますし、他にも良いお店は沢山あります。ぐぐれ。
で、店に行ってどの酒を選べばいいかなんですが、銘柄が多すぎて全然分からないと思います。俺も分かりません。なので自分がどんな酒が好きか知っておくのが重要です。というのも、ひとくちに日本酒と言っても、ものによって味が違うから。そりゃもう全然違います。
辛口甘口はよく聞く指標だと思いますが、さらには酸味や苦味、渋味と合わせて五味と言うそうで、それらの強弱バランスに香りまで加えると、日本酒の味はとんでもなく広い振れ幅を持ちます。月並みな言い方ですが、「米から造られているとは思えない」ようなフルーティな日本酒もあれば、「米!」って感じの酒もあります。
一般には五味のバランスが良いものが良い酒って事になっているらしいですが、バランスが良いと言っても、淡くてスッキリ飲みやすいものあれば、それぞれの味が強いながらもその上でバランスをとっているような主張の強い酒もあります。あとは敢えてバランスを歪にしている辛ーい酒とかメチャクチャ酸っぱい酒とかね。
自分の好きな味の傾向や銘柄が分かればそれを店員さんに伝えて、何種類か提案してもらった中から選べばいいです。そうしているうちに段々銘柄も覚えて自分で選べるようになると。とはいえ結局、何が美味い酒かってのは個人の好みで全く変わるので、飲んでみないと分かりません、つー事になります。
だから飲みに行こうぜ
食べログとかぐるなびで調べて、「日本酒にこだわっている」とある居酒屋に行けばいいと思いますよ。
日本酒に限った話ではなく、焼酎でもワインでも、ある種の酒を幅広く取り揃えている店というのは、店主も店員も酒が好きで、こだわって集めているというのが普通です。そういう店はただただ酒を美味しく飲みたい、飲ませたい人の集まりだったりしますから、それに合わせる料理も大概美味いです。
この写真の牛すじ煮込みは680円かそんぐらいだったと思います。まあ片手ぐらいの器で出てくるだろうと思っていたら、いきなり一人用土鍋。ひとつひとつが有り得ん程に大きく切られた牛すじがトロットロに煮込まれて箸でちぎれる柔らかさ。そして脂が脂ががが。甘ったるくないさっぱり味なのに、舌を牛の脂分が甘く柔らかく巻き込み、それをしっかりした味の日本酒で流し込む瞬間ときたら!! 死ぬ。美味死する。
うま死ぬ、っていうか酒が無くてもこれがどんぶり飯つきの定食で出されたら毎週のように通ってメタボ死ぬ自信あるわ俺。
で、何だっけ、えーと、好みの酒は実際に飲んで探しましょうという話。
酒屋で何買っていいか分かんないから居酒屋に行くわけですが、当然居酒屋でも何注文していいか分かんないですよね。だから素直に店員さんに聞きましょう。
日本酒にこだわっている居酒屋の店員さんは大抵聞いてもいねえのに死ぬほど薀蓄を垂れてくださいます。産地や米・酵母の種類、製法、杜氏の年齢、酒蔵社長の人柄まで。いろんな話が聞けて皮肉でなく面白いので店員さんに相談するのは本当におすすめです。
相談する際の禁句は「おすすめの酒」。先にも書いたとおり、日本酒の味はものによって全然違うし、人の好みも千差万別なので、質問としてはザックリしすぎなんですね。だからこれを言うと大体微妙な反応をされます。
全く分からないなら「飲みやすいやつ」とか「スッキリしたの」とでも言っとけばいいんじゃないでしょうか。料理を注文していたらそれに合うもの、っていうオーダーでもいいし、飲み比べセットを用意している店も多いです。飲み比べたら、その中から好みだった酒を伝えて、次の注文につなげればOK。
好みに近い、似たような酒ばっかり飲むのもいいんですが、敢えて全く違う感じの酒をくれ、と頼むのも楽しいです。本当に全然違う味のが出てくるからね。局所最適に陥らないように、時にはランダムに日本酒空間を探索するのです。
あれば買う酒
一部大手メーカーの酒を除くと、自分で日本酒を買うのは結構一期一会なところがあります。小さな酒蔵ならばそもそも流通量が限られますし、行った酒屋に取り扱いがなければそれまで、あったとしても丁度在庫があるタイミングに出会えるかは運です。
取り扱いがあるのが分かってりゃ予約するなり取り寄せるなりすればいいんですが、俺は新しい酒との出会いも求めているので基本的にそれはしません。
ただ、見かけたらリピートする酒ってのはいくつかあるので挙げてみます。なお、同じ銘柄の酒でも種類によって味は変わりますので注意。
新政(あらまさ)
最近人気の銘柄らしいです。社長さんが若い方で、色々と挑戦的な試みをしているとか。
ここの酒は結構お気に入りで5種類ぐらい試しているので、自分で買った酒の中では一番多いです。その中で一番好みだったのは写真の「六號 ひやおろし」。桃やマスカットに例えられていますが、そこまで甘い香りって訳でもなく。ただ、酸味と甘味に確かに果物を思わせる部分はあり。ちょっと舌にピリピリ来るのは果物の酵素っぽくて面白かった。
2013年のはもうどこにも売ってないので、次に買うのは秋かな。
山の壽(やまのことぶき)
Evernoteのメモを見たら「フルーティ地獄」って書いてあった。もう少しマシな形容はないのかこのクソ酔っ払いが。(俺です)
山田錦と雄町の吟醸をそれぞれ買って飲みましたが、同時に飲み比べたわけじゃないので米の違いはよく分かんない。しかし酔っ払った状態からでも分かる華やかな香りの力。力こそパワー。マスカットに例えるなら新政よりこっちじゃないかと思います。
葡萄を感じさせるので「ワインのような」とも言えますが、あんまりその表現は好きじゃないです。これは日本酒。そういう日本酒。ワインに例えたらまるで日本酒が「従」のようじゃないか。ワインがこの酒に似ているんだ。ワインが来い。むしろ病院が来い(俺のもとへ)。そういうスタンスでいきたいと思います。
ただの嫌な偏屈モンじゃねえか。
作(ざく)
うちの嫁さんはこの純米大吟醸が一番好きだといいます。
基本的に俺が買ってきた酒を少しばかり飲むだけの彼女が半分以上を飲みつくし、自分でもう一本買ってきたのだから余程の事です。
味はスッキリ、バランスのとれた酒というやつだと思います。甘い良い香りがする一方で、甘み・酸味は強くないので果物感はあまりない。嫁さんはそれを「イチゴショートの味」などと乙女チックな表現をしますが、俺が買った酒を一人で半分以上空ける姿に乙女成分は無いな。
これも何種類か飲んでますが、「PROTOTYPE」を除いて大体系統は似てますね。いきなり大吟醸に行かなくても、純米や純米吟醸で十分美味しいと思います。
七本鎗(しちほんやり)
2006〜2011年の大阪在住期間によく行っていた滋賀の店がありまして、俺の日本酒好きのルーツはそこにあります。
日本酒好きの大将が本業の片手間に趣味でやってるような店で、嬉しそうにメニューに載ってない酒ばっか出してくる。地元滋賀を中心に、各地のいろんな酒を試させてもらいました。ですが、ここはひとつメニューに載ってた酒を。滋賀といったら七本鎗。なのかは知りませんが、個人的には意外と見かける機会のある酒です。
辛口だけども淡麗ではなく味は濃い。日本酒用語だと旨口っていうのかな。やや強めの酸味と、やはりフルーツを思わせる吟醸香。俺はグレープフルーツを連想しましたね。単品でもいけるし、味の強い料理にも合いそう。
ソガ ペール エ フィス
これも件の大将の所で飲んだ酒。
長野県は小布施町のワイナリーが畑仕事の出来ない冬の間だけ息抜きとして少量仕込むという変わり種の日本酒。ジャンルが異なるとは言えど、醸造のプロが仕込む酒。息抜きとうそぶきながら本気の酒を出してきます。
むしろここに挙げた中では一番基本に忠実というか、日本酒と言ってイメージしやすい味の酒です。ワイン蔵が「ワインみたいな」日本酒を作らないってのは面白い。わざわざ違うことをするのだから、似たような酒を作っても仕方ないしね。
きりっとした辛口で酸味あり。吟醸香は控えめで、後味にちょっとだけ米の甘み。ラベルではヨーグルトに例えてあって、なるほどそんな感じだ、と頷きました。これはもう食中酒でしょう。どんな料理でも合わせられると思います。
ちなみに蓋は開けづらい。
この酒わりとすぐ完売しちゃうんですけど、まだ何種類か在庫のある店はありますね。写真のNUMERO UNではないんで、味の系統が違う可能性もありますが、興味があるなら今のうちです。
俺も買って飲み比べしてみようかな。
NEXT FIVE
続いてこちらも少量生産品。
先に紹介した新政を含む秋田の5つの蔵が共同で醸造するブランドがNEXT FIVE。今年の銘は「Shangri-la」でした。毎年予約完売コースらしいんですが、たまたま東京駅内のはせがわ酒店で売ってたんですよね。写真はカウンターバーでとりあえず一杯飲んでみたときのもの。美味かったんで2本買って帰りました。
クリスマスに発売なので、一本は年末の帰省で実家に持って帰ったのですが、香りがよくてびっくりするぐらい軽い飲み口の酒なので、普段それほど酒を飲めない母や姉が結構飲んでました。500ml瓶なんで瞬時に無くなりましたが。
逆に、酒飲みの親父さんに買って帰った俺の友達は「これは日本酒じゃない」と言われたとか。奥深いのねぇ、日本酒。
醸し人九平次(かもしびとくへいじ)
先日出席した後輩の結婚披露宴が、「新郎新婦が選んだ日本酒飲み放題」というマーベラス極まるプランでして、そこで初めて知ったのがこれ。でも結構有名な酒みたいですね。
その場で一番気に入ったのがこれで、名前のインパクトもあってよく覚えていたんですが、某所のデパ地下をフラフラしていたら見つけました。「え、大吟醸なのに千円台なの!?」 と即買い。ぬるまってしまわないよう、速やかに帰る羽目となりました。
結構複雑な味です。口にいれた瞬間は辛口かと思うのですが、甘みも酸味もあって、香りも酒盃の中にいるときと口の中で変わる気がする。それだけ口の中では主張するのに、後味はスッキリというかほとんど残らない。面白い。
日本酒って温度で相当に味が変わるんですが、その特性が強いんじゃないかな。
ネットでも買えますけど、俺が買った時よりちょっと高いですね。やはり事あるごとに酒屋に寄るのがオススメ。
他にする事無いのか。
無い。
特権
多種多様な日本酒が安価かつ最高のコンディションで楽しめる。それは日本に暮らす者だけの特権なのですから、存分に楽しまなければ損というものです。
ちなみに、このエントリでむやみに料理の写真を貼っているのは、これ読んだ人が酒飲みたくなったらいいなと思ってのこと。
なお、夜中に料理の写真をアップする事をネットスラングで「夜食テロ」と言いますが、見事な自爆テロとなった模様。
これを書いている途中で飲みだしてしまい、投稿が真っ昼間になったことをご報告して終わります。