俺は原作をリアルタイムで読んでいた世代なんですけど、結構冷めた目で見ていた方だと思います。
四次元殺法コンビ先生もこう言っています。これが誰でも思いつくような代物か、というとまた議論の余地もあるでしょうが、やっぱり下ネタはギャグとして安易なイメージを持ってしまいます。
いや、しかしこの映画化はズルい。問答無用で面白いわ。
アクションに入る前のポージングだけで劇場に笑いが起きる。ビジュアルの効果が凄まじいのです。何でこんなに笑えるのかと考えたんですが、多分漫画じゃないからなんですね。

変態奥義・地獄のタイトロープ。映画だと技の発動前にバーンと引きの画が入るのですが、それだけで劇場内がドッと沸く。演出が格好良いのよ。仕事人みたいで。
ギャグ漫画として読んでいるとどうしても「これはギャグです」というフィルターが掛かってしまうのだと思います。技を食らっている側もギャグ漫画らしく目が飛び出していて、それが「パンツを被った半裸網タイツの紳士がロープを伝って滑り降りてくる」という気の狂ったシチュエーションをもデフォルメしてしまうのです。
そのフィルターが実写化することで取り払われて、異常さがダイレクトに飛び込んでくるようになる。元々がギャグなんでいわゆる「シリアスな笑い」とは違いますが、ギャグですよ、低予算ですよ、B級ですよ、と言い訳のようにわざと安っぽくしたりはせずに、可能な限りは格好良い画で魅せようという気概が見て取れます。でも大写しになるのは私のおいなりさんだ。そんなもん笑うに決まってんだろ。
鈴木亮平のアクションも素晴らしい。動かない演技と言うんでしょうか、一つ一つのポーズの再現度が高すぎる。
劇場に飾ってあったこのフィギュア、本人から型を取った非売品ということなんですが、この絶妙に気持ち悪い腰の角度。これが完全に再現されています。
序盤の銀行強盗ににじり寄るシーンなんかその真骨頂で、実写になることで漫画のコマとコマの間が補完されて、流れるように無駄のない気色悪さ。銀行強盗の怯える様子が演技に見えんよ。殺陣も派手ではないものの、攻撃を躱す動きひとつ取っても大変にイヤでして、なるほどこれが変態仮面のアクションかと感心することしきり。これ結構研究したんじゃないかなあ。よく出来てます。群がる敵をちぎっては股間に押し付け、ちぎっては股間に押し付け。何これ。
残念だったのは敵の頭をパンツに挟んでの「成敗!」が無かったことでしょうか。まあ見たくないけどさ。
一方でドラマに関しては元々あって無いようなもんというか、映画である必要は全くありません。初めてパンティ(パンツではない)を被るシーンで「このフィット感……肌に吸い付くようだ……」とか、本来モノローグになる部分を全部喋ってしまうあたり、映画好きの人に言わせりゃ演出として下の下なんでしょうけども、これはこれで一つのギャグとして成立させる以外に手はないだろうとも思います。卓越した演技力のみでパンティのフィット感とか湧き上がるエクスタシーとか表現しきられたらそっちのが嫌だよ。
1800円払って映画館まで観に行く価値があるか、というのは映画を語る上でのひとつの指標ですが、俺は観てよかったと思います。これはくだらない事を真剣にやっている様を楽しむ作品であるゆえに、こちらも真剣に最高のシチュエーションで受け止める、つまりは映画館で観るのがベストだと感じました。何より周りから笑いが沸き起こる臨場感は自宅じゃ味わえないしね。
ただ、繰り返しますけども、くだらないですからね。観に行く人は自己責任で。