テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)
著者:ヤマザキマリ
販売元:エンターブレイン
発売日:2009-11-26
おすすめ度:5.0


 古代ローマ人が現代日本へタイムスリップ。高度な文明に驚愕するという、いわゆる「て、鉄のイノシシじゃあ〜!!」系のお話です。そんな系があるかどうかは知りませんが。

 こういうネタの元祖が何なのかは知りませんが、ドラえもんのエピソードでも扱われたことのある由緒あるテーマです。

 要するにベタなテーマ。ですがこの漫画、一体何が作者の頭の中で起こったものか、あまりにも斬新…というか異次元の方向へ捻じ曲がっております。簡単に言うと「SF歴史ロマン風呂漫画」方面に。
 タイムスリップする主人公のルシウスは建築家。新しい公衆浴場の設計を「古い」と切って捨てられ、職を失い、落ち込みながら入った公衆浴場で排水口に引きずり込まれる。

 もがきながら水面に飛び出して、ようやくのことで息を吸い込み辺りを見回す。そこは現代日本の銭湯だった。

銭湯
突然現れた「外人さん」に驚愕する客

 ということで、定番のタイムスリップネタを何故か風呂だけにフォーカスしてしまったのがこの漫画です。

 ・ケロリンの桶を手に取り「なんという美しい黄色なのだ…」
 ・「きょ、巨大な一枚板の鏡…!?」
 ・映画のポスターを見て「こんな技を持つ職人が存在するとは…」

 ご多分に漏れず、現代文明に対するリアクション漫画と化すのですが、ものが風呂に特化されてるため何やっても面白い。

フルーツ牛乳
フルーツ牛乳
浴衣
浴衣

 個人的に一番好きなのがこのコマ。
ハイテクトイレ
ハイテクトイレ

 自動で開くトイレの蓋に思わず陰影が濃くなるルシウスさん。日本の無駄にハイテクなトイレには現代の外国人観光客も驚くそうですが、ローマ人の解釈は一味違う。

 「便をするだけの為に何人の奴隷を使っているのだ!?」

 動力は奴隷。そうきたか。

 この漫画、コメディとして高い完成度であるのは勿論のこと、ローマ人の目を通して日本人の異常なまでの風呂・トイレへのこだわりを改めて気付かせてくれるという点でも良く出来ています。こうして見ると日本人は風呂が好きすぎる。

 そして何とかローマへ戻ったルシウスは、その不可思議な体験から得たアイディアにより浴場設計技師としての名声を得るのでした。つづく。

 続くのかよ!!

 この漫画が1話限りの読み切りではなく、続いてしまったときには誰もが驚愕したことと思います。おまけに単行本には「I」って。すげえなあコミックビーム。

 巻末の煽りがまたなげやりでいい。
過酷な運命と風呂に翻弄されるルシウス!!
頑張れルシウス!!
 頑張れルシウス!!


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