
著者:ロバート・J. ソウヤー
販売元:早川書房
発売日:2002-10
人類と歴史に残るファーストコンタクトを果たしたエイリアンが何故か殺人事件の容疑者としてカリフォルニアの法廷に立つ。そんな頓狂なシチュエーションを大真面目に描いたSF小説。
「あなたには黙秘権があります。もしも」
「ちょっと待ってくれ」 フランクが眉をあげた。
「黙秘権を行使する場合、あなたが口にすることはすべて、法廷であなたに不利な証拠として使われる可能性があります。あなたには」
「エイリアンを逮捕できるわけがないだろう!」
何ですかこのコント。
エイリアン・トソク族の男を相手に「容疑者の権利」を読み上げる警部補に始まり、選挙が近いため容疑者保護に手を回すことが出来ない大統領、「正義」を実行して知事選出馬に弾みをつけようとする検事。
いや、アンタら何でそんなに普通なの!? 相手は人類をはるかに超えるテクノロジーをもったエイリアン。事は単なる殺人事件じゃない、地球規模の問題ですよ? もっと高度な政治的判断とかないのかよ。
どうやったら「法律に定められている通り」、苦痛を感じさせずに死刑にできるのかを考察するシーンなんかは滑稽そのものです。
そんなわけで、この小説に出てくる偉い人たちは揃いも揃ってアホの子なのですが、それは単に非ヒューマノイドのエイリアンを法廷に立たせるという思考実験がやりたかっただけだと言うことですね。末節はどうでもいいんでしょう。
気になる人は読みながらメトロン星人の話でも思い出して下さい。多分どうでも良くなります。(なにもかもが)

ちゃぶ台
エイリアンvsカリフォルニア州という間抜けな構図を除き、法廷ものとしては真っ当すぎるほどに真っ当。アメリカの陪審員制度における戦略は非常に興味深いです。
例えば自分に有利な陪審員を選別するために陪審コンサルタントを雇ったり、実際の陪審団と似た構成の「影の陪審団」を雇って弁論の有効性を確かめる等。さすが訴訟大国だけあって、駆け引きも力技。
一方でファーストコンタクトもののSFとして見た場合、法廷という舞台が意外なほどに好相性。尋問により互いの認識を確認していくという作業が、全く異なる文化をもつ異星人を理解していくのに最適なんですね。
裁判が進むにつれ、被告や他のトソク族達の証言により彼らの生態や、思想・技術・信仰などの文化などが明らかになっていく。
異形のエイリアンはとても紳士的で理知的。ユーモアもある。自然と被告を応援したくなるのだけれど、彼は非常に率直でもある。自分に不利になるようなことでも平気で喋っちゃう。
そして、あらゆる状況証拠が被告の有罪を示しだしたところで始まる弁護人の奇怪な尋問。それを切欠に導き出されるトソク族の特性が大きく関係した真相と共に、彼らが地球へやってきた理由とその顛末までが物凄いスピード感を伴って描かれていきます。
大半を占める尋問シーンはそのための種蒔き。そして一気に刈り取った後にも更なる展開が用意され、これまた突拍子もない(でも素敵な)オチで締め。うーん、面白いぞSF。
もっとも、一般的なSFの面白さとはベクトルが違うんじゃないだろうかという気もしますが。
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時間封鎖/ロバート・チャールズ・ウィルスン
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どうやったら「法律に定められている通り」、苦痛を感じさせずに死刑にできるのかを考察するシーンなんかは滑稽そのものです。
そんなわけで、この小説に出てくる偉い人たちは揃いも揃ってアホの子なのですが、それは単に非ヒューマノイドのエイリアンを法廷に立たせるという思考実験がやりたかっただけだと言うことですね。末節はどうでもいいんでしょう。
気になる人は読みながらメトロン星人の話でも思い出して下さい。多分どうでも良くなります。(なにもかもが)

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