先日途中で力尽きた漫画紹介の続き。10巻縛りなのは、うっかり長期連載漫画に手を出すと止まらなくなって危険だからです。

 購入数は100冊を超えました。


俺物語!!/アルコ✕河原和音




 電子書籍はお買い得価格で攻める集英社。紙420円に対してkindle版は368円です。気にはなっているけど、手が出ない。そんな本をうっかり買いがちな電子書籍においてその呼び水効果は絶大です。(俺に対して)

 手が出ない本の筆頭、少女漫画でラブコメ。この漫画は連載当初から各所で話題になっていましたが、興味はありつつもなかなか買わずにいました。Kindle Fireの導入に伴い、ようやく読んだ次第です。

 あーくそ、確かに面白い。ジャンルで壁を作るのは損をしますね。

 俺の少女漫画の知識なんて、嫁さんが観てるドラマを後ろから眺めてた「花より男子」ぐらいのもんでして、確か金持ちでいけ好かないイケメンをヒロインがぶん殴って付き合う話(要約)でした。面白かったです。

 こんな感じの「クールでモテモテのイケメン。一見性格は悪いけど私にだけは優しいの!!」というのが少女漫画における鉄板スタイルですが(注・全く読まない人間の偏見です)、この「俺物語!!」の主人公、猛男はイカツイ角刈り男。眉毛は太く、唇は厚く、熊のような体格で勿論柔道部。少女漫画のテンプレ彼氏(偏見です)とは対極にいるビジュアルです。


 牛乳瓶がヤクルトのようだ。

 この猛男、いわゆる「男が惚れる男」という奴でして、朴訥、生真面目、力持ち。誰にも優しく、友情に篤く、スポーツは万能。高校進学で猛男と別れる同級生(男)や後輩達(男)は泣いて寂しがったという「漢の中の漢」です。しかしその外見ゆえに好きになる女の子からは敬遠される。

 そんな猛男に両想いの可愛い彼女ができるという何とも幸せな話です。

 主要な登場人物がほぼ全て底抜けの善人。困っている人を助けずには居られない猛男。猛男を外見で判断せず(というか外見も格好良いと思っている)べた惚れ、でも一歩引いて相手を思いやれるヒロイン凛子。猛男の内面の良さを知り、鈍感な猛男を事あるごとに助けるイケメンの親友、砂川。

 猛男に彼女が出来た事を心から喜ぶクラスメート達や、実は猛男に惚れているが、それでも凛子を励まし応援する砂川の姉。「猛男の事が好きなライバルが出てきたらどうするか」という仮定で凛子と一緒に作戦を立ててくれる女子校のクラスメート達も良い。善人の周りに善人が集まる出来過ぎたポジティブスパイラルが嫌味なく受け入れられて、何だこりゃ、本当に幸せな話だぞ。

 猛男は可愛いヒロインに惚れられるに見合う本当にカッコイイ男でして、凛子の為に発揮する超人的パワーと活躍は痛快の一言だし、不器用だが実直で誠実な考え方と言葉は心を打つ。「こんな奴がモテないのはおかしい」ってキャラをちゃんとモテさせてくれているので、読んでる方も嬉しくなるんですよね。

 もはやイチャイチャドギマギをニヤニヤしながら眺める心境はとっくに通りすぎて、「ええ子や……この子らはホンマええ子達やで……」といい加減な関西弁で訳の分からない安心感を得る境地に至ります。

 いやー、面白い。(自分の反応が)

予告犯/筒井哲也




 これも面白いとは聞きながら、読んでこなかった漫画です。ネットの動画サイトを使って犯罪予告をする犯人、通称「シンブンシ」とそれを追う警視庁サイバー犯罪対策課を描いたクライムサスペンス。

 筒井哲也といえばWEB漫画の「DUDS HUNT」。スッゲー面白いんですが、心は荒む。「予告犯」も間違いなくそっち方面だろうなと。

 はい。バッチリ引きこまれて見事にやり切れない気分になりました。うん知ってた。

 シンブンシのターゲットになるのは俗にいう「炎上案件」。集団食中毒を起こした挙句、逆ギレ会見で世間の反感を買った食品加工会社は「火を通す」として会社を燃やされ、バイト先でゴキブリの天ぷらを作ってSNSに流した学生は拉致られ、自身の考案した特別メニューを食わされる。

 今のようにWEB漫画が一般的になる遥か以前から話題をさらっていた作者だけに、ネット関連のネタ元が生々しくて。まとめサイト、まとめWiki、削除しても繰り返される動画投稿。消すと増えます。ただ面白がっているだけのスパムコメントの嵐。シンブンシが犯罪を繰り返すに連れて支持者は増えていき、社会現象化。国会議員からはWEB規制論が叫ばれる様になる。

 捜査チームのリーダーである美人刑事は「炎上」をこう評します。

 歪んだ正義感を振りかざして溺れた人間に石を投げる
 それを楽しいと感じる連中が増えてるんだと思う

 この言葉が何に刺さるかって、シンブンシによる「制裁」に少なからずスカッとしている自分が居ることなんですよね。倫理的に間違っている、正義感が暴走している、と分かっていても炎上を楽しんでしまうゲスい感情は俺の中にも間違いなくありまして、それをチクチク刺激しにくるんですよ。こうやって前もって釘刺してるくせに。

 被害者はさらにゲスく描かれているので、この漫画で「ざまあwww」「メシウマwwww」「コロンビア」となるのは自然な事だと思うんですが、俺、現実の炎上も結構楽しんで眺めちゃってるから何か自分にもダメージが。ふと現実に立ち戻って自分を見てしまう辺り、如何に作者がネットの現状に精通しており、如何にリアリティを維持したまま描写されているのかが分かろうというものです。

 ただ、ヘッドマウントディスプレイつけてWEBカメラで通話するハッカーはどうかと思うな。お前パスワードクラックするときPCに向かって「よし……そのままだ……よーしいい子だ……」とか言うだろ絶対。

 予告の上で警察の操作をすり抜ける手練手管を持った知能犯。当然ながら炎上に便乗した愉快犯などではなく、全ての犯罪はただ一つの目的のために。そこは興味があったら自分で確かめましょう。全3巻でさくっと読めます。

モブサイコ100/ONE




 小学館のWEB漫画は「裏サンデー」が面白い。個人で活躍しているWEB作家を集めて、原作者として作画担当を付けるか、あるいはそのまま本人に連載させちゃう。

 投稿トーナメントを行い、上位入賞者はU-2リーグというランキングを作り競わせる。昔ながらのWEB漫画スタイルを土台に置いた、ボトムアップ的手法と言えるでしょう。講談社のモアイとは全く逆のアプローチです。

 特徴としては絵が下手な作家が多数居ることですが、逆に言えば拙い絵でも支持を集めているわけで、やっぱり面白いんですよね、そういう漫画。

 メイン連載陣の中で一番絵が下手なのがこの「モブサイコ100」。作者はWEB漫画界一番の出世頭、ONE。代表作「ワンパンマン」は村田雄介作画で大ヒット中ですが、これも「面白いWEB漫画ない?」系の話題になると必ず筆頭に挙がる常連でした。それもプロの作画が付く前から。原作の画力は見ての通り。つまりストーリーと演出で読者を惹きつけていたということです。(俺は絵柄も好きだけど)

 タメからの解放によるカタルシスを描くのが上手い作家さんだと思います。主人公の茂夫(しげお、音読みしてモブ)は地味、貧弱、引っ込み思案。あだ名の通りのモブキャラで通っているが、実は強い力を持つ超能力者。普段は努めて超能力をセーブしている彼が感情を爆発させる時、凄まじい力が発現する。

 ある種ベタなこの基本プロット自体がタメ → 解放のためにあるようなもんです。しかもモブの爆発はストーリー開始時点からカウントダウンされて、クライマックスのタイミングは嫌でも分かるようになってます。ところがこの漫画はこういうあからさまな仕掛けを逆手に取って、意外性のある転がし方をしてくる。

 怒りで力を解放する主人公は少年漫画には掃いて捨てるほどいますが、モブの感情の発露はそれだけに留まりません。ネタバレになるので詳細は避けますが、悪者を圧倒的パワーでブッ飛ばすだけがカタルシスではないのですよ。

 特に俺は最近シリーズ完結した「爪編」クライマックス前後が好きで。「対超能力者ドロップキック」からの一連の流れは笑えて、燃えて、救われる。こんな解放の仕方もあるんだ、と単行本購入の決め手になったのがこの辺りです。詳しく書けないんで連載追ってない人は何言ってんだか分からないと思いますが、これは人に読ませてネタバレOKで語りたい。

 続きが気になる、って意味では今一番の漫画です。

実は私は/増田英二




 前のエントリからここまで講談社、集英社、小学館ときたので、4大、というか4誌しかない週刊少年誌の残る一角、秋田書店。

 これもどこかで紹介されているのを見た事はあったけど買ってなかったラブコメ。「俺物語!!」を買った影響か、おすすめに出てくるようになって購入しました。

 先程恐ろしく少ないサンプルと凄まじい偏見に基づき「自分にだけ優しいイケメン彼氏」が少女漫画ラブコメのテンプレだと書きましたが、少年漫画でそれに相当するのが「様々なタイプの女の子に囲まれる、あまりパッとしない主人公」だと思ってます。

 これもそういうテンプレ設定バリエーションの一つなんですが、他と一線を画す特色が。主人公を囲む女キャラはヒロインの吸血鬼をはじめ、宇宙人、狼女、悪魔、付喪神、未来人といった人外ばかりということが挙げられます。

 いや、書いてて特に珍しくない気がしてきた。大丈夫かこの国。

 思ってる事がすぐ顔に出てしまうため隠し事ができない黒峰朝陽と、吸血鬼であることを隠して学校に通う白神葉子。白神さんに告白しようと向かった放課後の教室で秘密を知ってしまった朝陽は白神さんに秘密を守り通す事を誓うのでした。


 設定が設定なんでコメディ色強め。白神さんは何故今までバレずにいられたのか不思議なぐらい迂闊でして、お陰で「羽根出てる!!」「キバ見えてる!!」「コウモリ集まっちゃってるー!!」と朝陽が振り回されるテンポがよい。

 告白には失敗したものの、好意が丸わかりの朝陽に対し、とんでもなく鈍い白神さん。というか白神さんに限らず登場する女の子は基本的に全員アホの子。恋愛方向に進まずにすごい勢いで空転していく話が多く、ギャグ漫画としてまず面白い。

 普段は鳴りを潜めている本分のラブコメもしっかりしてて、「うっかり」イイ雰囲気になってしまった時に全力で赤面するキャラ達はかわいいね。こういうのを見てニヤニヤするのは何だかんだで好きです。

アンモラル・カスタマイズZ/カレー沢薫


アンモラル・カスタマイズZ
カレー沢薫
太田出版
2013-11-15


 こ れ は ひ ど い 。

 大体その一言で片付くんですが、あえてストーリーを紹介しますと、「週刊風俗大王」を出している出版社で新しい女性ファッション誌を作ろう、という話です。社長は女子力の高いホモ、編集者は人間のクズ、あとなんかカワイイキャラを出せと言われたから唐突にムササビ。本当にひでえな。

 作者のカレー沢薫は女性なんですが、だからこその女性ファッション誌に対する適切な突っ込みと、「モテカワ」「愛されコーデ」「自然体」等に対する憎しみが程よくブレンドされて大変ドロリとした手触りに仕上がっています。


 オブラートさん仕事してください。

 作者は可愛いネコマンガ(?)の「クレムリン」でも時折すげえ毒吐いてたりしましたが、今回対象が(多分)嫌いなモンになっているので舌鋒がキレッキレで留まるところを知らない。俺は勿論女性ファッション誌なんて読みませんが、本当ならばそりゃ突っ込みたくもなるわという内容ばかり。

 下ネタも全力オンパレード状態で、女子力低い新人編集が入ってきてからのいじられ方が本当ひどい。俺さっきから殆ど「ひどい」としか言ってない。


 電車の中では絶対読めません。どうしても笑っちゃうのと、人に見せられない内容という二重の意味で。

秋津/室井大資


秋津 1 (ビームコミックス(ハルタ))
室井 大資
KADOKAWA / エンターブレイン
2013-09-20


ボクは この父が とっても いやです

 秋津家は漫画家の父親と、小学生の息子の二人暮らし。母親は夫に愛想を尽かせて出て行った。何故なら、父は非常にエキセントリックな性格。子供っぽく、わがままで、すぐ拗ねる。屁理屈垂れで訳の分からない言動をしては息子を困らせ、叱られる。

 非常に漫画的なキャラクターですが、ギリギリ実在しそうなリアリティがいい。子供目線というより、中身が子供のまま大きくなってしまった父親が、それ故に成熟してしまった息子からたしなめられる。本人は息子を楽しませるつもりと言い張るが、方向性が間違っている。

 息子は父親をあからさまにウザがっていますが、それでもギリギリ愛がある。それが冒頭の「とってもいやです」だと思っています。「嫌い」じゃなくて「いや」。鬱陶しいし、恥ずかしい父親だけど、憎めない。周りの人間も呆れはするけれど何だかんだでこの父親を見放さないギリギリの距離感。全体的にギリギリ感の漫画です。

 父親のセリフ回しが独特で、それに対する無言の突っ込みがじわじわ来る。


 (祈りが…!)

 じわじわっていうかこの何気ないシーンで俺は大笑いしてしまったのですが、最後に逆ギレしているところなんかも含め、非常によく秋津父のキャラクターを表していると思います。実際に居そうで、居たら嫌なんだけど、このリアリティが良いバランスで他人の笑える不幸話のようなおかしみを醸し出します。

 不幸話といっても本人が笑い話として話す類の所に踏みとどまっており、そういう意味でもギリギリ。こういう微妙なツボを突く笑いってのは合う合わないが大きいと思いますが俺は大好きです。

神聖モテモテ王国/ながいけん




 いや、売ってたからね。オリジナルは既に電子化してライブラリに入ってるし、新装版も持ってます。


 でも売ってたら買うよね。買いますとも。別におすすめはしません。

 電子化するならサンデーコミックス未収録分も入っている新装版の方がいいのにね。

 新装版が電子化されたらまた買っちゃうんでしょうけども。

つづく


 ひとつひとつが前より長くなったような。言いたいことはあるだけ書きたくなってしまうので、適当に短い紹介文だけ書いてアフィリエイトを貼りまくる目論見がすっかりパアです。

 どうせ今後も漫画を買うことは止めないので、暇な時にボチボチ続けていくと思います。