「パーツから自転車が生える」、という言葉があります。

 自転車はパーツを取っ替え引っ替えし、自分だけの1台を造りあげることも楽しみのひとつ。それこそが自転車沼の正体でもあるわけですが、そいつに足を突っ込んでしまった人の後ろには使っていないパーツの山が出来上がります。

 ハンドル、ステム、サドルにクランク……。それらを眺めながらふと気づいてしまうんですね。

 あれ……? これあとちょっとパーツ足せばもう一台自転車が出来るんじゃ?

 斯くして、不完全なパーツ群から何故か新しい自転車が出来上がってしまう。足りない部分がいつの間にやらニョッキリと補完されてしまうその様を「生える」と表現するわけです。
 で、先日ちらっと書きましたが、パニアバッグからミニベロがまるごと生えました。ternのLink N8

 自分で言うのも何ですが、カバンからの自転車栽培に成功した人間はそう居ないんじゃないかと思います。すごいな俺。

 実際のところを言えば、以前Verge X30hに一目惚れして以来、ternの自転車は欲しかったのです。そんなわけでコゼバックはただのきっかけにすぎません。

 結局Verge X30hは高価くて手が出ないのでこのLink N8になりましたが、結果としては他2台の自転車と棲み分けが出来るベストチョイスだったんではないかと思います。

 こいつは街乗り目的。同じく街乗り用のクロスバイクと比べてしまうとタイヤは太く、重量もあるためそれほどスピードは乗りません。もちろんガツンと踏むならママチャリの比にならないポテンシャルはありますが、まあ20km/h前後でちんたら走る。そういうスタイルが似合う自転車かと思います。

 スピードが出ないというのは歩行者と共存しやすいということです。すぐ止まれますし、小径車は漕ぎ出しも軽いからストップ&ゴーの繰り返しもあまりストレスにならない。人ごみに遭遇して押して歩くにしても、比較的小さいサイズは周囲の邪魔になりづらい。泥除け付きなのも嬉しいね。

 一言でいうなら「駅前チャリ」。駅前や商店街など、人通りの多い場所をぶらつくならこいつで。比較的遠かったり、街の中心地から外れたところに向かうにはクロス。思いっきり遠くに行きたかったらロード。そんな使い分け。



 いかにもな形状でわかると思いますが、このチャリはフォールディングバイクです。1分足らずで畳めます。

 と言っても、俺自身は畳める事自体にはあまり価値を感じていません。保管スペースの節約といってもたかが知れているし、すぐに出来るとは言え、毎度毎度開いて畳んでは面倒。車にも積めます、って車持ってねーよ。

 でも、そんな俺にとっても折り畳むことの価値を飛躍的に上げてくれる純正オプションがありまして、それこそがこのLink N8を選んだ理由でもあります。



 それがこのトロリーラック。荷台に車輪と輪行袋がついていて、何も持たずに身ひとつチャリ1台で輪行できるというアイテムです。これスポーツタイプのVergeシリーズには付かないんですよね。

 本当は車体と同時購入の予定だったのですが、メーカーがダボ穴の位置を間違えて生産してしまったとかで、まだ入荷されていません。俺はこれが装着されてからがこのチャリの本領発揮だと思っています。

 輪行で何が大変かというと、電車の中での肩身の狭さなんですよね。何しろスペースを食うから。乗客の少ない時間や路線を選んで、端っこの車両から乗り込み。それで乗り降りの邪魔にならない壁際スペースが確保できればいいですが、そうでなければ状況によって動かす必要もありますからおちおち座ってもいられません。

 それがこのLink N8とトロリーラックならキャリーケース同等のサイズと運搬性を手に入れることができるんですよ。通勤ラッシュでもなければ大抵の電車には気兼ねなく乗れるでしょうし、運ぶのだって車輪付きだから引きずればいい。クロスやロードとは別の意味での機動力があります。

 今は23区内だったら大体自転車で行っちゃいますから、想定する利用シーンはもっと遠くの都市部。例えば横浜あたりまで電車で行って、みなとみらいから赤レンガ倉庫、山下公園を通って中華街で得体のしれない乾物を買って帰り、自宅で途方に暮れてみるとかでしょうか。

 別にそれがやりたいわけじゃあないんですが、それなりに大きな買い物をするには自分の中に楽しげな未来を描くことが重要なのですよ。これを手に入れたらこんなことができるぞ、という物語を。乾物は要りませんが。

 そんで今はトロリーラックが入荷されるのをのんびり待ちながら、色々と弄りまわし、走りまわり。


カスタム

■バイク
 まずバイク本体の話なんですが、試乗できる店を求めて千葉県は柏の橋輪さんまで行きました。ちょうど所望のカラーが前日入荷されたばかりとのことで、既に買う気満々だったのですがまずは試乗。そしたら何かブレーキの引きが重かったんですよね。

 聞いてみるとブレーキもシフターもメーカー出荷状態のワイヤーが一般的な物より太いため、摩擦抵抗でタッチが悪くなってしまっているとか。ということで、販売分は無料でワイヤー交換をしてくれています。

 何が言いたいかというと、やはり自転車は信頼できる実店舗で(できるなら試乗をして)買うのが安心だということ。今回はこれでひとつ勉強になりましたが、いきなりAmazonとかで買ってたら引きの重さとワイヤーの摩擦抵抗が頭の中で結びつきませんから、「こういうもんだ」と思いながら乗り続けていたかも知れません。

 記事のフォーマットを揃えたいんでネットショップのリンクを貼っちゃってはいますが、自分で分解・整備できない人は自転車本体をネットで買っちゃダメですよ。トータルで損するから。

 ワイヤー変えてくれたから言うわけじゃないですが、橋輪さんは感じのいい店でしたよ。オススメの帰り道マップなんか書いてくれたりして。



 柏からの帰り道。江戸サイの松戸らへん。ラックがまだないのでこんな感じでコゼパニアを下げて帰りました。意外にも足にぶつからず、手前に向いているから荷物もすぐ出せて便利でした。立ち漕ぎはできませんが。

 革かなんかで小さいバッグを自作して付けてもいいな。カメラ入れたい。



 嫁さん用にも色違いで1台。彼女が変な体勢で写っているのは画面外で猫がゴネゴネとのたくっているからです。



 俺も1枚。見事に背景に溶け込んでて良く分かんない。

 2月初頭だというのに随分と暖かい日だったなあ。猫がこんだけダルンダルンになる程度には。


■シフター
 Link N8のシフターは前後にガチャガチャ回すグリップシフト仕様。変速に不便はないのですが、幅を食うので右手を置く場所が少なくなるのがやや不満。バーエンドをつけるにも一旦グリップを外して切るなり交換するなり必要なので、いっそのことシフターも換えちまえと購入。

 シマノの8スピード用シフター。変速はリアだけなので、右側だけ。あんまりバラ売りしているところがなかったので、大した選択の余地もなく楽天で購入しました。気を抜くとスパム祭りになるからあんまり使いたくないんですけどね。

 これまで色々自転車をいじってきましたが、駆動系の部品交換は今回初めて。といってもアウターケーブルはそのままなので、元々ついてるシフターとワイヤーを引っこ抜いて挿し換えるだけ。特に失敗もなくできました。

 ワイヤーを引っ張ると軽いギア、緩めるとバネで重いギアへ。理屈では分かってましたが、実際触ってみると本当にシンプルな仕組みですねえ。

 全部プロに任せるのもいいですが、できるところから少しづつ自分でやるようにすると急速に理解が深まります。幸い今は大抵のことはネットで調べられますし、調整とか失敗したらショップに持ち込めばいいしね。


■グリップ
 コンフォートグリップと言えばエルゴン。ちょうどバーエンドも付けたかったし、迷うことはありませんでした。

 エルゴンのグリップは初めて使ったんですが、良いですねーコレ。コンフォートというと柔らかくて衝撃を吸収してくれるようなものを想像するのですが、こいつは普通に硬いゴムです。そして端に向かうに従って薄く手前に広がった形。これが実に手に馴染む。

 握るんじゃなくって、手を置く。手相で言うところの生命線から小指の付け根にかけて、上半身の体重を乗せちゃう。ダラダラゆっくり走るには最高です。

 なるほど、これはある程度硬くないと駄目だわ。柔いと支えにならない。



 シフターと合わせてこんな感じ。なかなか様になってるじゃないですか。



 ちなみにAmazonで「Ergon」と検索をかけるとこんなもんが出てきます。

 安いし赤が欲しかったんで最初はこれを買ったんですが、届いてみるとこれが非常に胡散臭い。


 まずパッケージが違う。正規品のグリップは左のように握って試せるようなパッケージになっているのですが、これは右側の紙を台紙にしたブリスターパックでした。

 で、この台紙をよく見ると左側に何故か「詠」って漢字が入ってます。ドイツ製品なのに。

 おまけに最初はバーエンドがグリップの表裏逆向きで付いてました。

 ていうかErgonがこういったカラーの製品を出していた形跡がそもそもありません。

 うん、あの国製の偽物っぽいですね。



 ただ、決して使い心地が悪いわけではないんですよ。形はまんまコピーですし。



 結局正規品に買い換えたのは色が気に入らなかったからです。黒いハンドルバーにグレーのグリップはどうにも締まらないし、赤いバーエンドは思った以上に似合わなかった。同じ暖色だから、ぐらいの理由で取り入れましたがむやみに色数を増やすのはまとまりがなくなってよろしくないですね。

 ちなみにこの写真を撮った直後に強風で倒れてバーエンドに盛大に傷が入りました。おかげさまでフレームその他は無傷。それだけでも買った意味はあったと思おう。


■ボトルケージ&ボルト
 完全に街中用なのでボトルケージはペットボトル用のを。ミノウラのは頭が丸くなっているのが格好悪いのでBikeguyのを買いました。Topeakのアジャスタブルなボトルケージを買わなかったのも同じ理由。見た目重要。


 何となくボルトもカラーに。STRATOSのブルー/オレンジのコントラストが印象的だったのでブルーにしてみました。



 まあ、可もなく不可もなく。あんま目立たないね。


■Garmin用マウント
 自転車3台目になって足りなくなったので。自分のと嫁さんので2つ買ったら2個入りだったよチクショウ。

 余ったマウントから自転車生えたらどうしてくれるんだ。世界初の偉業になっちまうわ。


■ライト
 blinderの1LEDバージョン。当然4LEDよりも光量は落ちますが、その分サイズダウンしてよりスマートに。



 2回もゴムが切れたにもかかわらず、俺はすっかりblinder信者です。利便性もさることながら、やはりデザインが群を抜いています。気づけば我が家にはblinderシリーズが6個もあるという有様。

 中でもお気に入りなのがスカルのリア用レッドLEDバージョン。


 なんともキュートでございます。

 どうも国によって販売モデルが違うようで、日本ではこのリア用スカルは売っていません。

wiggleで買えますんで、普段利用している人なら送料調整としては手頃かも。うちは下手するとまだ増えそうです。


まとめない

 自転車がずんどこ増えていくことに対する言い訳(自分への)はもう諦めました。自転車乗りは良く「用途による使い分け」を口にしますが、用途がどんどん細分化されてくんだから始末に負えない。何だよ、「駅前用」とか「街外れ用」とか。何だよって俺が書いたんだよ馬鹿。俺の馬鹿。

 もう3台目が増えたのは「太陽が眩しかったから」とか何かそういったアレのせいです。怖いね、自転車。