同人で、かつボードゲームという、それはそれはニッチな世界。アニメやゲームのキャラクターをカードに乗っけてそれっぽいルール付けた(もしくはルール丸パクリ)だけのゲームも多い中、完全オリジナルでここ最近の話題をさらっていたのが本作です。

 どこ行っても品切れ。同人だからそれほど数を作っていないだろうということを加味しても、かなりのヒットなのではないかと思われます。

 俺は初版を買いそこねて2012春のゲームマーケットでようやく手に入れたものの、プレイする面子が揃わずしばらく積みっぱなし。最近ようやくプレイすることができました。確かにこれは面白い。


 ループもの、というSFの定番ジャンルがあります。このゲームはその中の1パターンである、「時を遡って事実の改変を試みる」タイプのストーリーを題材とした推理ゲームです。

 4人専用。惨劇のシナリオを描く「脚本家」と、時を遡る能力を持った3人の「主人公」サイドに分かれての勝負。

 邪悪たる脚本家の目的は惨劇を次々と引き起こし、その流れに抗わんとする主人公たちの姿を「観劇」すること。主人公プレイヤーは惨劇の巻き起こる数日間をループしながら情報を集め、脚本を破綻させ惨劇を回避すれば勝利となります。逆に一定回数のループで惨劇を防げなければ敗北。

 脚本家がシナリオとして設定するのは、主人公の敗北条件を定義する「ルール」と、登場人物の「役職」、ループ中に4回起きる事件の「犯人」「事件名」「発生日」。このうち事件名と発生日は主人公プレイヤーへの公開情報となります。

 ゲームボードは病院・神社・都市・学校の4エリアに別れており、それぞれに登場人物を配置。キャラクターカードはイラストとサウンドノベル風シルエットが両面に書かれており、どちらを使用してもOK。ストーリーを描くゲームなのでイメージを固定しないシルエット面を用意するというのは気がきいてます。

キャラクターカード

 彼らは犯人であり、被害者であり、また事件とは無関係に、脚本家によって伏せられた「役職」を個別に持っています。巻き起こる事件からそれらを解き明かしていくのが主人公の勝利への鍵。

プレイ中

 プレイは脚本家と主人公が交互にキャラクター又はボード上に行動カードを置くことで進んでいきます。行動カードの内容は大別すると3種類。各種カウンターを置く(取り除く)こと、キャラクターカードの移動、それらの行動の阻止。

主人公用カード3種と脚本家用カード

 乗せるカウンターは3種類。

■友好カウンター
 キャラクターカードに一定数置かれると、そのキャラクターの能力が使えるようになる。例えば刑事ならば発生した事件の犯人を知る等、主人公プレイヤーに有利になるもの。

■不安カウンター
 予告されている事件発生日に、その事件の犯人に対して一定数以上乗っていると事件が発生する。逆に言えば事件が発生した時に不安カウンターが乗っていたキャラクターが犯人ということになるので、犯人の絞込みにも使える。

■暗躍カウンター
 ボード上にも置ける。こちらも事件発生の条件だったり、脚本家能力(後述)の発動条件になっていたりする。即ループ終了に繋がるような凶悪な効果が多い。

不安カウンターと暗躍カウンター

 カウンター乗り乗りで今にも何かやらかしそうな娘さんたちの図。脚本家はできるだけ情報を与えず事件を起こせるように、主人公は手持ちの情報から脚本家の意図を読んで、それを阻止するためにカードを配置していきます。この辺り、ロジカルな推理と読み合い・駆け引きが良い感じに同居していると感じる部分です。

 で、もう一つの隠されたパラメーターである役職。脚本家は役職固有の能力を任意または強制的に使うことができ、周囲に不安カウンターをばらまいたり、同一エリアにいるキャラクターを殺したりできます。これらは脚本家に有利な能力である一方で、主人公への情報を増やしてしまうことにもなるので使い方には注意が必要。

 少々ややこしいですが、事件の犯人であることと役職持ちであることは別で、「別に事件の犯人じゃないけどシリアルキラー」みたいなキャラクターもシナリオ上はありえます。犯人はアンジェロだけど吉良吉影も静かに暮らしているよ。的に。

 事件が発生しないように立ち回っていたら、敗北条件のキャラクターがポロッと通りすがりの殺人鬼に殺されてループ終了になっちゃったりするんですね。最初は脚本家が設定したルールすら主人公には分かりませんから、それはそれで有用な情報になるのですが。

 むしろ片っ端からキャラクターを殺させてシナリオを解析するという鬼畜プレイも有効なので、脚本家が必死で殺人を食い止めるような面白ストーリーが展開されることもあるでしょう。

 主人公A 「吉良にアンジェロ殺してもらったら良くね?」
 主人公B 「お前マジ頭いいな」
 脚本家 「ちょ」

 ひどい話だ。

サマリーシート

 ルールや能力はサマリーシートにまとめられていて、主人公プレイヤーはこれと睨めっこしながら可能性を一つ一つ潰していきます。プレイ内容によって確定事項が少しづつ増えていって真相に近づいていくのは絶対楽しいはずです。はずです、というのは俺は今回脚本家だったので。

 んで、脚本家。これがまた超楽しい。不確定情報だらけの中、右往左往するプレイヤーを見ているのはまさに観劇。テーマとゲーム内容がすんごいマッチしてるのですよね。自分だけが全てを知っている優越感。ちょっとしたミスリードで、主人公をを翻弄する快感。少しづつシナリオが解き明かされて追い詰められていく焦燥感。どれもこれも悪役冥利に尽きるものでありましょう。

 シナリオは自分で作ってもいいし、オフィシャルのものも豊富。投稿シナリオなんかもあってネタには事欠かかない。

 全力で主人公を殺しに行くガチプレイもいいですが、「観劇」というコンセプトを考えればあえてヒントを出すようなプレイもありでしょう。勝つにしろ負けるにしろ、どちらもギリギリの方が楽しめると俺は思います。その裁量権を持つのは脚本家だけですし、それは手加減とは違います。

 しなくても良い油断をわざわざして負けるのもまた、お約束。それも悪の華というやつです。


 最後に不満点をちょっとだけ。日数とか事件発生日のカウンターをボード中央に置くようになっていますが、頻繁にカードを動かすこのゲームでは超邪魔。すぐ場所がずれて訳わかんなくなる。カードにもカウンターが乗ってますから、どうしてもスライドさせるように動かしがちで、だからこそ尚の事。

 この辺はボード周辺に追いやるか、別にチェックシートでも用意するのが良いんじゃないかと思います。ちょっと格好悪くはなりますがね。

 それさえ除けば、同人とは思えないような立派な作り。ゲーム自体は文句なく面白いですし、3700円でこんだけ詰め込んであれば言うことはありません。お買い得だと思います。


 文章よりはプレイ動画を見たほうが早かろうと、探してみたらありました。無料配布のアルファ版ですが、ルール説明から実際のプレイまで。


 見てたら「またアイマスか」と言われた。仕方ないじゃん、ボドゲ動画って大半がアイマスなんだから。