女子総合格闘技というマイナーなジャンルの漫画なんですが。主人公が良い。すごくイイ。

 強く明るく天真爛漫。溢れる才能を持ちながらも驕らず努力を怠らない。そしてなにより楽しそう。スポーツ名門校で格闘技部を立ち上げ毎日が充実している馬渡ゆず子。


ゆず子



 ……が、何だか楽しそうでムカつくので叩き潰したい石堂夏央さんが主人公です。


夏央さん

 うーん。酷い台詞。

 夏央は夏央である種の天才でして、大抵のことはすぐにコツを掴んでしまい、必死で努力している人間をあっというまに凌駕してしまう。それゆえに何をしても退屈。それゆえに楽しそうなゆず子に嫉妬し潰そうとする。

 だが、現時点で夏央の実力はゆず子には遠く及ばない。ならばどうするのか。

 努力するんですねこれが。

 「なんかアイツ気に入らないから潰したい」という出発点から取る手段が「地道な努力」ですよ。卑怯で姑息な真似をするんじゃなくて。それは天賦の才能故に努力をすることさえ許されなかった夏央の願いにも合致するわけです。努力して努力して努力して、達成感を得たい。報われずとも、努力することに喜びを感じたい。

 でも目標は「アイツ気に入らないから潰したい」。

 しかも理由が「充実してるから」。何この八つ当たり。

 ある種の歪さを表現するのに「手段のためならば目的を選ばない」なんて言い回しがありますが、この場合目的も手段もきっちり選んだ上でこの捻くれ様ですからね。真っ直ぐ真っ当に捻れていると言いますか。

 多分夏央の唯一の友達であるケイは彼女をこう評します。


ケイ

「でもまっすぐに性格悪いからいいと思うよ ずるくなくて」

 良い表現。よくも悪くもまっすぐなので、普通の女子高生で真っ当なスポーツマンとしての夏央と他人を踏み台にする悪役としての夏央の二面性が乖離しない。読んでて腑に落ちる。つまりナイス悪役。主人公なのに。

 先日3巻が発売されたばかりなのですが、その中のモノローグがあまりにもマーベラス。夏央というキャラクターを一発で説明できますのでちょっと長めに引用します。

いいなぁ……
いいないいなぁ……

そういうの凄くいい……
そういうの凄く好きだ……

そこら中に凄い人がたくさんいて……
やらなきゃならない事がたくさんあって……

地道に努力しなくちゃいけなくて
でも報われないかもしれなくて……

しかも私には気に入らない目標がいる……

なんてロマンチックなんだろう!!
うん!!
頑張ろう!!


ドキドキ

 目ぇキラッキラさせてこれ。目標であるゆず子と同じ目をしてこれ。痺れるわー、この歪みっぷり。俺はこれを見てこの記事を書こうと思ったのです。

 物語はまだ主要人物紹介が終わったばかりといった感じの序盤なんですが、その彼女らの性格やら過去の因縁やらといったキャラクター造形にメリハリが効いてて非常にイイ感じ。

 キャラクターに焦点を当てて紹介しましたが、格闘シーンもスピードとか重みが感じられて迫力あり。まだ巻数も少ないし、今は読み始めるのにとてもいいタイミングなんじゃーないかとお勧めしておきます。

 ほら、明日体育の日だし。歪んでるけど熱血スポーツ漫画ですよこれ。