未来さん 未来さん (アスペクトコミックス)
著者:新谷 明弘
販売元:アスキー
発売日:1998-08
おすすめ度:4.5


 近々引っ越すんで整理も兼ねて本棚を掘り返していたら、ちょっと懐かしいのが出てきました。

 この作者は初期のコミックビームに何度か読み切りの短編を描いたあと同誌で連載開始。この人の読み切り作品が好きだった俺は小躍りして喜んだもんですが、単行本一冊だけ出してそれっきり音沙汰もなし。面白いのになあ。
 作風は「日常系SF」とでも言いましょうか。近未来の「普通の生活」を切り取った連作短編なんですが、その何でもない日々として描かれる未来像がちょっとズレてて面白い。

 例えば、未来の政治はヒトで構成される「人脳院」とAIで構成される「電脳院」の二院制。と、ここまでは良くありそうな設定なのですが、この世界ではAIを選挙で選ぶ。

 選び方。各AIのサンプルロムが配布されているので、実際に使ってみて決める。計算能力で決めるも良し、炊飯器に組み込んでごはんの炊き加減で決めるも良し。

炊飯
AI炊飯

 子供はサンプルロムに対戦ゲームをさせて遊んでいるし、大学の中ではアレな人たちが「闘争」と称してサンプルロムを焼いてたりする。

 そして料理はこう。
料理
料理

 こんな感じでこの漫画が描かれた当時の日常に、どこか間の抜けた未来ガジェットが無理なく同居。実に実に「未来感」の欠けたステキ未来がそこにはあります。

 スクリーントーンは使わずに直線も手書き。素朴な画風がいわゆるレトロフューチャーとは一線を画した「ださ未来」にぴったりフィットして滋味深い作品となっております。

 というか、SF作品を紹介するのに「滋味」なんて言葉がサラッと出てくる辺りがそもそもおかしい。なんだこれ。

 当然のごとく絶版ではありますが、特にプレミアがついているでもなく、古本がAmazonで普通に格安で買えます。あまり良い紙を使っていないせいか「ヤケあり」ばっかりですけどね(俺のもひどい)。そういうのを気にしない方は是非どうぞ。

 未収録短編入れて復刊してくんないかな。


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