友達100人できるかな 1 (アフタヌーンKC)友達100人できるかな 1 (アフタヌーンKC)
著者:とよ田 みのる
販売元:講談社
発売日:2009-08-21
おすすめ度:4.5

「直行サンハ地球存続ノタメニ愛ノ存在ヲ立証シテ頂キマス」

出来なかったら人類滅亡
「出来ナかったラ人類滅亡」
 ある日、地球は謎の宇宙人に襲撃される。彼らの地球侵攻を回避するためには、人類が愛を持つ存在であると立証しなければならない。

 その調査個体となった36歳の小学校教師・直行。愛の存在を示すため、彼に課せられた課題は「友達を100人作ること」。

 「ラブロマ」「FLIP-FLAP」と、とにかく直球なラブコメを描いてきた作者の新しいテーマは「友情」。またしてもド直球。そして面白い!!

 直行はナビゲーターの宇宙人と共に小学校3年生当時の街にタイムスリップし、友達を作っていくことになります。「友達成立」の条件は左腕にはめられた装置で互いの愛を測定し、MAXにすること。

 この「互いの愛」というのが肝。真に相手のことを想い、相互の信頼を築いてこその友情なわけです。

 そして直行が最初の友達に選んだのは宇宙人の仮の姿である「道明寺さくら」。彼女と友達になる第一話のクライマックスが、設定の説明としても物語の導入としても素晴らしいので、ちょっとネタバレになりますが引用します。

「子供が生まれるんだ……
頑張ってマイホームの頭金も作った
僕だけの家族を作るためにやっと大人になったんだ
それなのにこんなことになって
お前のことなんか好きになれるわけがないだろ……

バカヤローッ!!!
 一気に増加し、MAXに到達するゲージ。

……これが僕の本音だよ
でも君を信用するって決めたんだ!!!」

友達になって下さい
「友達になって下さい」

 はい、ド直球かつ剛速球です。真っ直ぐ過ぎて斜に構える暇すらありません。ガキ大将とは河原で殴り合いの喧嘩をするし、空想の世界で冒険をする読書少年とは本気のごっこ遊び。

 最初は大人目線で同級生と接してしまい失敗する直行が、真剣に相手のことを考えて友情を育んでいく。そして大人の小賢しい打算を捨て去り、対等にふれ合うことができた時に真に友達となる。

 これは少年誌には描けない少年の友情。大人が少年時代を振り返るための物語です。例えば幼馴染の女の子のエピソード。

 小学3年生といえば、男子は男子、女子は女子のグループに分かれる年頃。当然一緒に遊んでいるとからかわれ、囃し立てられる。「好きなんじゃねえの」「ケッコンしちまえよー」。そこで直行はこう言うわけだ。

友達を好きで何が悪い!!!
「友達を好きで何が悪い!!!」

 良いですね。これは中身が大人じゃなきゃ吐けない台詞。子供の頃にこれが言えなくて苦じょっぱい思いをした人がほとんどなんじゃないでしょうか。それゆえにこのシーンは快哉である、と言ってもいい。

 こういう「大人だから出来ること」と「子供にしか分からないこと」のブレンド具合が実に良い感じなのです。ああ、何というおっさんホイホイ漫画であろうか。

 80年代に小学生時代を過ごした者としては小道具もツボ。

キーホルダー
骸骨キーホルダー

 こんなキーホルダーとか懐かし死ぬわ。他にも五段変速のチャリとかコスモスの自販機とか銀玉鉄砲とか、心をくすぐるアイテムがポロポロと。そういう意味でもおっさん漫画です。20代後半〜40歳ぐらいの人が一番面白いという。

 月刊誌なので毎回一人づつ友達を作っていったら100ヶ月=8年と4ヶ月。現役小学生も卒業してしまうペースですが、願わくば地道に進みますように。間違っても「サッカーチームを作って10人まとめて」とかやらかさないように。掲載誌はアフタヌーンだから大丈夫だとは思いますが。

 このままきちんと完結させたら名作として名を挙げられる漫画になる気がします。おっさんの間で。


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