南極料理人

 「南極料理人」観てきました。予備知識全くなしで行きましたが、これが面白かった。「サマーウォーズ」の場合は、どうせ観る人は言われんでも観に行くと思っていたのでネタバレの羅列で感想を書きましたが、この映画は俺と同じで上映してることすら知らない人も多いと思うので、ネタバレなしで紹介します。


 舞台は南極の昭和基地からさらに1000km以上も内陸部、富士山よりも標高が高い「ドームふじ基地」。ウイルスすら生存できない極限環境に身を置いて働く男達の物語。の、はずなんですが、基本的にはオッサンたちがモリモリと飯食ってるだけの映画です。

 何故ならこの南極への「単身赴任」は1997年のお話。気温が−50℃を下回ろうが、基地には電気が通っていて、暖房も効いてりゃ、シャワーも浴びられる。その日のちょっとした仕事を終えたらあとは飯食って寝るだけなんですから。

 ということで、全体的にダラーっとした空気の流れる映画です。

 基地の中と、周辺の何も無い雪原でのシーンが映画の殆どを占めますから、半ば密室劇のようなもんです。なので、会話の比重が大きいつくりになっているのですが、これが絶妙。あまり笑わせようという衒いを感じさせないで、ぼそりと呟く一言で笑わせる。

 笑いを後押しするのが映像と、間。これを間延びしていると考えるか、溜めてると考えるかで評価に差が出るように思います。

 大爆笑ではなく、連続してクスクスと笑わせる感じ。密室劇で笑いと言うと三谷幸喜が思い浮かびますが、三谷作品によくある「気まずさを笑いに転化する」ようなネタがないのもいい。見てて恥ずかしくなっちゃうので。(「ラヂオの時間」とか好きですけどね)

 各隊員の仕事のシーンは殆どなく、仕事の合間の息抜きや、遥か日本にいる家族や恋人とのやりとり、そして勿論食事のシーンをメインにして話は進んでいきます。

 みんなガツガツモリモリ食う。それを嬉しそうに眺めるのが料理人役の堺雅人。主な演技は笑顔。

 堺雅人の表情による演技はすごい! 何がすごいって、何とも言えない困った状況に対面したときの「えーと、こういうときに俺はどんな顔すりゃいいわけ?」と言わんばかりの、感情がまぜこぜになった味のある表情。を、何通りも使い分ける。七色の微妙ヅラを持つ男。
 
 1年以上の共同生活で、メンバーのヒゲや髪は伸びていき、どんどんむさくるしくなっていく。そしてどんどん家族のようになっていく。堺雅人がどんどんオカン化していくよ。

 こうやってメンバーが家族化してく過程がいかにも男所帯な感じでよろしい。酒飲んで馬鹿騒ぎするのは基本、雪原で野球してみたり、パンイチで−70℃の外に出てみたり。

 なんつーか、友達の家に酒を持ち込んでバカ話をしながら朝までダラダラ飲んでみるような、そんな気だるくも心地よい空気。かといって、雰囲気だけの映画には終わらず、何気ない会話から拾った伏線はすべてきっちり回収。ちゃんと映画しているんだなあ。

 特に大きなメリハリもなく、のーんと時間が過ぎる映画でありましたが、その時間はあっという間でしたね。ストーリーを求める人には合わないでしょうが、だらけた空気が好きならば面白いんじゃないでしょうか。

 公開1週目だというのに劇場はガラガラでしたが、このままマイナーで終わるのは勿体無い。原作買ってみようかな。


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