ロケットボーイズ〈上〉ロケットボーイズ〈上〉
著者:ホーマー・ ヒッカム・ジュニア
販売元:草思社
発売日:1999-12
おすすめ度:5.0

ロケットボーイズ〈下〉ロケットボーイズ〈下〉
著者:ホーマー・ヒッカム・ジュニア
販売元:草思社
発売日:2000-02
おすすめ度:4.5


 映画「遠い空の向こうに」の原作で、著者であるホーマー・ヒッカム・ジュニアの自伝。映画を観たのは10年近く前。大雑把に説明すれば、「さえない理系のウォーターボーイズ」ってところでしょうか。

 米ソの宇宙開発競争真っ只中の1957年。炭鉱の町・コールウッドに暮らすホーマー少年は、ソ連による世界初の人口衛星・スプートニクを見上げたことをきっかけに宇宙に魅せられ、ロケットにとりつかれる。

 彼はいつしかケープ・カナベラルで宇宙開発に携わることを夢見て、仲間達と共に、手製のロケット開発を始める。
 最初に書いたように、これは自伝。事実に基づいた話なのですが、驚く程に「物語」なのです。ロケットに自分の夢を見出した少年が、努力と友情、多くの失敗と挫折の果てに未来を切り開く。

 まるで青春映画のテンプレートのような物語。映画を観てから10年分歳をとっても、やっぱり俺はこの青臭い話が大好きだ。ベタなストーリー上等!!

 ロケット開発には様々な問題が立ちふさがります。最も大きな障壁は、炭鉱の責任者でもあるホーマーの父。この人は「炭鉱こそわが人生、石炭堀りこそ男の仕事」と考えているようなガテン系会社人間。
フットボールのスター選手である兄のことはよく褒めるが、運動も勉強もパッとしないホーマーに対しては冷淡。

 炭鉱の町は家から工場から全てが会社の所有物。そこから材料を調達したり、ロケットを製作することを厳格な父は許しません。

 が、ホーマーをわが子のように可愛がってくれている炭鉱労働者の協力や、唯一ロケットボーイズの活動を理解してくれる化学教師との幸運な出会いにより、ロケットは失敗を繰り返しながら少しづつその完成度を増してゆきます。

 フットボールの強豪である体育会系高校のヒエラルキーでは最下層であるはずのロケットボーイズ。その活動は徐々に話題となり、町の人々に愛され、応援されるようになる。うん、俺は基本的にヘタレが頑張る物語が好きなんだな。

 ホーマーが頑張る理由は将来の夢のためだけではなく、父に認められたいから。父は父で、息子のやることは理解できないままですが、いつのまにかさりげなく手助けをしてやるようになる。

「父さん、鋼鉄の管が欲しいんだ」
 ↓
「ダメだ。話は終わりだ」
 ↓
2日後、何故か鋼鉄の管がポーチに立てかけてあったりする。

 ニヤニヤしてしまうわ! このツンデレ親父め!! こういう父と子の不器用な距離感がいい。頑固親父がついには(親父的に)不出来の息子を認めるまでの過程。じわっと来るね。

 そして炭鉱町の人々の協力を得て完成したロケットは、炭鉱町を飛び出して生きていくための道を切り開く。美しい話じゃないか。

おかげでわかったことがあった。なにかを学ぶというのは、それがどんなにむずかしいことでも、どうしても知りたいという気持ちが強ければ、そんなにむずかしくはないということだ。

 個人的には、この物語はこの一文に集約されます。やりたいことがあったので、頑張ったら、成功した。ただそれだけの話。「努力は必ず報われる」などという絵空事は犬にでも食わせりゃいいと俺は思っていますが、努力が実を結ぶ様を見るのは大好きですよ。


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