「オシャレな服の店は、居るだけで体力が減っていくんだよ」

 と、その人は言いました。


 オシャレな店は言ってみれば「毒の沼地」なんだそうだ。一歩進むごとに何かがガリガリと削れていくと。

毒の沼地
図解された

 その気持ちは良く分かるし、日常的に服を選んで買うという行為をしていない人は皆そんなもんじゃないかと思います。


服屋こわい


 いわゆる「オタクファッション」になってしまう人(以下「オタク」。実際にオタクかは置いといて)というのは、身なりに気を使おうとすること自体に一種の罪悪感というか、被害妄想的なものを持っているのだと思います。というか俺がそうです。

「あんなもっさい奴がオシャレしようとしてるよ。ふはは。笑える」

 オシャレな店の店員や他の客が自分を見たらこう思うに違いない、という被害妄想。それに耐えながら服を選ぶわけです。

 俺は今でこそ大抵の店で買い物できるだけの耐性が付きましたが、昔は気合を入れてようやく行けたのがジーンズメイトとかライトオンとかの国道沿いジーンズショップ。誰も俺の事なんか気にも留めていないのに必要以上に挙動不審になって、ろくろく試着もせずに妙に裾の長いネルシャツとか買っちゃう。

 はい、オタクファッションの出来上がり。あとは手持ちの服がヘタレて着るものがなくなるまで店には寄り付かない。怖いから。


全部毒の沼地


 先日、「脱オタクファッションガイド」という本を見せてもらいました。着ているだけでオタクっぽくなる地雷アイテムと、脱オタクのための無難な定番アイテムを漫画で紹介するという本です(流し読みなので趣旨が違っていたらごめんなさい)。
 
脱オタクファッションガイド脱オタクファッションガイド
著者:久世
販売元:オーム社
発売日:2005-10-26
おすすめ度:4.0

 さて、オシャレをしよう。と思っても、それまで服装に気を使ってこなかった人間にとっては、何を買ったら良いのかがそもそも分かりませんので、とても参考になる本です。ですが、それでもまだ脱オタクまでにはハードルがあるなと思いました。

 だってオタクは服屋が怖いんだもの。脱オタ第一歩である定番アイテムを買いに行くこと自体が大きな障害なのです。冒頭の例にならえば、ローレシア城の周りが全部毒の沼地ですよ。Lv1の王子じゃ最初の町にたどり着くことすらできやしないという。

 俺内ドラクエは2が基準です。


「脱オタファッション」の専門店を作ればいいと思うんだ


 さて本題。脱オタのための定番アイテムだけを集めたセレクトショップを作れば儲かるんじゃないの、という話。

 去年、西武百貨店が「服を買いに行く服がない」というキャッチフレーズを採用して話題になりましたが、オシャレな店で気後れしないように、他の店でそれなりの服を買っていく行為(服を買いに行く服を買う)はRPGで装備を少しづつ強いものに買い換えて行くようなもんです。

 そんな中、「ぬののふく」しか持っていない人間、スライムと戦ったことすらない人間が、そこそこ戦えるように「初期装備」を整える店には一定の需要があるんではないかと。

 無難なアイテムはそこだけ行けば一通り揃う。使いこなしの難しい服や、「地雷」は置かない。落ち着いて服を選ぶことができないオタクが、適当にその辺のものを引っ掴んで買い物してもそこそこまとまった外見になる。そんな店。

 なおかつ、オタクがキョドらないで済む心遣いや、買い物を失敗しない工夫なんかがあれば良い。


これならオタクでも安心 かも


 以下、こんな店だったら行きやすいなーという条件を挙げてみます。

【店員が話しかけてこない】
 オタクは自分の服装に劣等感があります。ゆえにオシャレな店員に気さくに話しかけられてもビビリます。無知をさらして恥をかくと思っています。必要ならばこちらから声をかけますからほっといてください。

【店員がオシャレすぎない】
 同上。オタクの劣等感を煽らない程度で小奇麗な格好をしていてくれれば十分です。いっそのこと黒Tシャツにキャップとか、ラーメン屋の店員みたいな格好でもしててください。客と見分けやすいし。

【専門用語を使わない】
 難しい用語は勿論のこと、「トップス」「ボトムス」というレベルの単語すら使わない。だって何となく気恥ずかしいから。

【組み合わせの提案は多めに】
 気に入ったセットを「これ全部ください」で片付けられるように。慣れない人が失敗する可能性を減らせます。むしろセット販売をメインにするぐらいの勢いで。客が皆同じ格好になってしまわないように、パターンは豊富に、かつ頻繁に入れ替える必要あり。

【適切なサイズを見切る能力を持った店員】
 どんなに無難な服でもサイズを見誤っただけで台無しです。ゆえに試着は必須なのですが、気弱なオタクは店員に声をかけられず、試着室が使えないケースがままあります。なので店員さんは商品のサイズを熟知しておき、明らかに体に合っていない物を買おうとしている客がいたらさりげなく教えてあげられるように。

 パッと思いつくのはこんな所でしょうか。オシャレな人は失笑するかも知れませんが、俺は実際こんなもんでしたよ。今だって店員に話しかけられるの苦手だし。


「脱オタ」マーケット


 こんな感じで、オシャレでもオタクに優しいアパレルショップがあれば新しいマーケットが開けるのではないか、とゲーオタで漫画オタの俺は常々考えております。

 ただ、アパレル業界の人はオタクの気持ちなんか分からないから実現は難しいでしょう。むしろ自分で店を開いてみたいのですが、そもそも俺には「無難」を提供できる知識とセンスがありませんでした。

 「脱オタ」に成功したオシャレさんが誰かやってくんないでしょうかね。俺は間違いなく客になります。パイも結構大きいんじゃないかと思っているのですが。


 ※いただいたコメントを参考に補足記事を書きました。
 「脱オタファッション」の専門店を作ればいいと思うんだ・補足