ディスコ探偵水曜日 上ディスコ探偵水曜日 上
著者:舞城 王太郎
販売元:新潮社
発売日:2008-07
おすすめ度:4.5

ディスコ探偵水曜日 下 ディスコ探偵水曜日 下
著者:舞城 王太郎
販売元:新潮社
発売日:2008-07
おすすめ度:3.5


 アンチミステリって言うんでしょうか。珍妙な建物で起こる密室殺人だとか、異様な「見立て」の連続殺人だとか、いわゆる「本格ミステリ」的な事件。それをちょっと見ただけで「あ、俺犯人分かったわ」つってスラスラと荒唐無稽な真相を語る「名探偵」が舞城王太郎の小説にはしばしば登場します。

 元々そんな風に本格ミステリをおちょくっているというか小馬鹿にしているような小説を書く人ですが、今回はその究極形。登場する名探偵の数、実に10人以上。過去作からの参戦もあり。ジャンプだったら間違いなく「名探偵バトルトーナメント」が始まっているところです。


 ディスコ・ウェンズデイはいわゆる「名探偵」ではない、迷子探し専門の探偵。保護した少女に関する調査をしているうちに、ミステリ作家の変死事件に行き当たる。

 作家の死の謎を解明すべく、現場の「パインハウス」には名探偵たちが集結。そこで始まる名探偵連続殺人事件。名探偵は推理を外すと殺される。やり過ぎにも程がある。いいぞ、もっとやれ。

 奇妙な構造のパインハウスには「本格」なギミックがてんこ盛り。『占星術』『カバラ』『聖書』以下略といった、「トッピング全部入り」状態。

 名探偵たちは舞城作品の名探偵なので、実に名探偵らしくあっさりと「真相」にたどり着いては殺されていきます。ホールに全員を集めて行われる、お約束の推理の披露。その時点では筋道の通ってる「真相」が、新たな事実が発覚するたびにスルリと逃げていく。

キッチン特ホウ王国
こんな感じ

 それまでの推理、どーん!! 俺の頭の中にフラッシュバックしたのは「キッチン特ホウ王国」のこのシーンなのですが、それはさておき。

 数々のトリックが湯水のように消費されていく上巻でパインハウス事件は解決。で、ようやく分かるんです。ここまで全部前フリだったことに。

 下巻を読むのは本当に一気でした。パインハウスでディスコが読者に与えた知見を下地に、広げて広げて広げまくられる大風呂敷。展開される宇宙論。いつの間にかミステリという枠組みはフッ飛んでいます。一介の探偵が、世界を滅ぼし、世界を救う。根幹にあるのはこの思想。

 この世の出来事は全部運命と意志の相互作用で生まれるんだって、知ってる?

 意思の力は全てを可能にするのだ。

 この小説はとにかく読みづらい。ふざけたトリック、難解な理論が頻出し、その都度理解するために立ち止まる必要があります。しかし、何とか把握しながら読み進めれば、圧倒的な世界観が待っています。

 ただ、人には全くおすすめしません。だって読むのえらい大変だったから。俺は舞城作品を結構読んでたから完読できましたが、慣れてない人は推理ラッシュの途中でブン投げると思います。

 読みきれる自信があるならどうぞ。「良く分からんが凄かった」なんてアホみたいな感想が出てくる作品はなかなかありませんよ。


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