時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)
著者:ロバート・チャールズ ウィルスン
販売元:東京創元社
発売日:2008-10
おすすめ度:4.5

時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)
著者:ロバート・チャールズ ウィルスン
販売元:東京創元社
発売日:2008-10
おすすめ度:4.0


 ここしばらく読書から遠ざかっていたので、自分が何を読みたいのか良く分からなくなっておりました。なんで平積みの所から「このミス」1位という分かりやすい本を買って立て続けに読んでみたわけですが、あんまり相性が良くなかったみたい。

 そんな訳で目先を変えて、「SFが読みたい! 2009年版」海外篇1位のこの作品を買ってきました。うん。やってる事は本質的にまるで変わってないね。でもいいの。これ抜群に面白かったから。


 ある日突然地球は暗黒の膜に覆われ、星も月も消失する。宇宙からゆるやかに遮断された地球の時間速度は外の宇宙の1億分の1になっていることが判明する。

 つまり、地球人が人生を全うするよりも先に太陽が寿命を迎えてしまい、その過程で地球は膨張した太陽に飲みこまれてしまうということ。

 地球と宇宙の時間の流れの違いと言えば、俺のようなSF素人は「猿の惑星」を思い浮かべるのですが、この作品ではその比率が1:100000000ときた。スケールの大きい話です。

 確実な地球滅亡を前にして人類が取った対策は、時間の流れを逆手に取って火星を居住可能な惑星にテラフォーミングしてしまうこと。

 火星にバクテリアを送り届け増殖させ、温室効果ガスが火星を包み込んだ頃に呼吸する有機体を送り込み、二酸化炭素と酸素を循環させる。大気が安定したころに植物を、さらにはもっと複雑な有機体を送り込む。

 かくして火星には独自の生態系が完成するというわけ。ブラボー。

 もちろんこれには莫大な時間がかかるわけですが、何しろ火星の時間は地球の1億倍で流れていく。5年もあれば文明が発生するのに十分な時間です。人類存亡をかけたシムアース!! なんと壮大な箱庭ゲーム!!

 「火の鳥」で一番好きなのは未来編という俺の心の琴線に触れまくり。カバー裏のあらすじを読んだ直後には購入を決定しておりました。

 避けられない破滅を前にして人がとる行為は、科学を武器に足掻くか、宗教に救いを求めるか、現実から逃避するか。壮大な生存計画を背景に、描かれるのは等身大で個人的な物語。

 高度な技術が発達した異世界ではなく、現代の地球が破滅に直面したら? という仮定は自分を投影しやすい分だけ手触りがリアル。滅亡を前にしてじわじわ狂っていく世界の焦燥感や息苦しさを十二分に感じることができる。

 一方で火星テラフォーミング計画の方は、成就したか? という所でとんでもない事に。ネタバレになるので書きませんが、あまりと言えばあんまりな展開に空いた口がふさがりませんでした。

 癖のないフラットな文体で、サラッと物凄いことを書いていたりするので油断ができない。息もつかせぬ、というのとはまた違うのですが、止め時を見失うという点ではほぼ同義。

 SFはあまり読まないのですが、これだけ楽しめるのなら古典と呼ばれるものから色々手を出してみるのも悪くないな、と思えた良書でした。

 ちょっと読書のリズムが戻ってきたかな。次は何を読もうか。