2007年03月31日

アラビアの夜の種族/古川日出男 このエントリーを含むはてなブックマーク

アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)
著者:古川 日出男
販売元:角川書店
発売日:2006-07
おすすめ度:3.5


 古川日出男作品の後先の整合性とか考えずにデタラメを書き散らすところが好きです。

 この本には著者不明の「The Arabian Nightbreeds(英名)」という原著があって、古川日出男は翻訳者であるという体裁をとっているのですが、アラビアの民間説話をごった煮にしたような荒唐無稽の物語に古川日出男の文体がぴったりなのですね。

 舞台はナポレオンの侵攻を目前にしたエジプト。フランス軍の近代戦術に太刀打ちできないことを早々に悟った奴隷は主人の知事に一つの策を提案する。読むものを虜にして破滅へと導く「災いの書」。それをフランス語に訳してナポレオンに贈り、フランス軍を壊滅に導くというもの。

 この「災いの書」の内容と、フランス軍の侵攻が交互に描かれていくのですが、この「災いの書」が本当に面白い。語り手が毎夜物語を綴っていくという千夜一夜を思わせる構成で、語られる物語は剣術魔術、魔人魔神魔王に勇者、それを飲み込む巨大地下迷宮。

 パーツだけ見るとどこのライトノベルだよ思えるでしょうが、そこは流石に綿々と語り継がれてきたのであろう説話の縒り合わせ、馬鹿馬鹿しくも壮大なアラビアンファンタジーにページを繰る手が止まらない。

 特に巨大迷宮が出来上がり、それが際限なく拡大していく展開は「ウィザードリィ」を思わせて(魔王と冒険者、地下迷宮の関係はまさにそれ)いにしえゲーマーにも堪らない出来。

 フルシチョフに「何してんだよ毛。もう。馬鹿。」と言わせる古川日出男ですから、もう口語が壊れる壊れる。これが語り手による物語であるということを感じさせるテンポになっていて、読んでいて気持ちよいのですね。

 さすがに本の虜になって他に何も出来なくなる、なんてな事はありませんでしたが、睡眠時間を削るだけの力は十分にあります。ああ恐ろしい。


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コメント一覧

1. Posted by ひとみ    2009年06月10日 12:57
「脱オタファッション〜」がおもしろくて読みまくってます。
アラビアの夜の種族、わたしもサイコーに好きなのですが。
これ「ウィザードリーっぽい」ではなくて、ウィザードリーのノベル化「砂の王」が災いの書のベースになってます。というかそっくりそのままです。

今は古本でもなかなか手に入らないみたいですけど、お手にとる機会があったらぜひ読んでみてください。古川さんのデビュー作だったはず。
2. Posted by 石橋    2009年06月10日 20:48
おお。そうなんですか。

WIZっぽいと思ったのは間違いじゃなかったんですね。
的を射ていたということでちょっと嬉しい。

Amazonのマーケットプレイスで中古が買えるみたいですね。未完みたいですけど買っちゃおうかな。

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