2006年05月14日

陽気なギャングの日常と襲撃/伊坂幸太郎 このエントリーを含むはてなブックマーク

陽気なギャングの日常と襲撃―長編サスペンス


 「陽気なギャングが地球を回す」の続編。伊坂幸太郎初の続きモノ。

 嘘を完璧に見抜ける冷静なリーダー、内容のない会話なら延々と話し続けられる演説の達人、人間よりも動物が好きな天才スリ、正確無比な体内時計を持つドライバーと、前作で読者に強烈な印象を叩き込んだ銀行強盗4人組。彼らの個性的極まる会話と哲学が楽しい作品です。

 前作はちょっと会話にやりすぎな部分を感じたのですが、今回はかなりこなれてきていてイイ感じ。各人のキャラクターを説明する必要がないからか、実に自然な形で変な会話を楽しめる。これこそ伊坂作品の醍醐味。ヘタな引用は楽しみを奪ってしまうだけなので控えますが。

 「日常と襲撃」なので、第一章ではメンバーそれぞれの日常に起きた事件が描かれる。これが元々は短編として書かれていたものなので、それぞれに起承転結のある軽いミステリが楽しめる。この一つ一つがまた面白いんだ。

 そして4人の日常が終ると、「さあ、仕掛けは撒き終わったぞ」とばかりに第二章が始まる。ここから視点がめまぐるしく変わるいつもの伊坂スタイルに。今までのは前振りだったのかよ、と、ものすごい「始まった」感に一人でニヤニヤしてしまった。

 元々短編だったものに加筆修正して、一つの長編として縒り合わせる。その手腕があまりにも見事。というか、俺はあとがき見るまで短編だったと気づかなかった。各短編の設定・会話・小ネタを余すことなく使い切り、痛快な結末へ。こういう悪人だけが不幸になる伊坂作品はやっぱりいいなあ。

 で、読んでて嬉しかったのは「伏線に気づけなかったこと」ですね。第一章でものすごく気に入って印象深い部分があったのですが、終盤で「ああ、あれを使うのか」って分かったときの気持ちよさ。これこそミステリを読むときの幸せ。読者のミステリ読みレベルと作品のレベルが釣り合ったときだけに発生しうる幸せ現象。

 しっかり印象付けて、その上で伏線だと気づかせないで最後にカタルシスを与える。この場合は多くの読者と作品を釣り合わせるという点で作者の実力が現れているんだろうな。

 あと、登場人物達の繋がり方や全体としての結末に、時代劇の「三匹が斬る」を思い出した。
  • 矢坂平四郎
    たまたま悪人に襲われている人を助けて事件に巻き込まれる

  • 久慈慎之介
    腕を買われて、相手が悪人とは知らずに用心棒となる

  • 燕陣内
    インチキ露天を出しているときに被害者側の知人と知り合う
 で、実は全員関係者でしたー、ってんで三匹が一箇所に集まって事件の全貌が見える。そして容赦なく悪人を皆殺しにする。

 ご都合主義・お約束満載の「三匹が斬る」を思わせる、というのは全くストーリーに対する褒め言葉にはなっていないのですが、思い出しちゃったので仕方ない。俺は「三匹」大好きなのでまあ良いか。


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1. 「陽気なギャングの日常と襲撃」  [ 読書とジャンプ ]   2006年05月15日 07:44
面白かったよ!文句なし!………といいたいところですが、伊坂作品には愛ゆえにハードルがどうしても高くなってしまうので、ちょっと気になるところを書いてみます。とは言っても面白いのは面白いんだけどね!【裏表紙から抜粋】人間嘘発見器成瀬(なるせ)が遭遇した刃物...

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