ロックンロール七部作


 「ベルカ、吠えないのか?」が面白かったので古川日出男2冊目。これは「ベルカ」と同じ文法で書かれていて「ベルカ」同様、というか「ベルカ」を遥かに上回る、あらん限りの駄法螺に乗せてロックンロールが全世界を侵食していく。イェー。

 アフリカを北米をユーラシアをオーストラリアをインドを南米を南極を。密輸機に乗せてキャラバンに乗せて死者舟に乗せてロシア鉄道に乗せて。ロックンロールは縦横無尽に駆け巡る。それを運ぶのは600人を超えるエルビス・プレスリーだ! 正気か?
 最近は文章に対しても「グルーヴ感」なんて言葉をよく使いますが、「あたし」の一人語りで展開していくこの小説も、独特のグルーヴで「流転(ロール)」する。「ベルカ」を読んだ人は「怪犬仮面」のくだりを思い出すと良い。全編アレだ! きっと法螺吹き病が止まらなくなったんだろう。愉快すぎて頭痛くなってくる。

 内容はそれぞれが独立した7つの大陸のロックンロール物語。どこかでクロスオーバーしてくるのかと思ったら全然しないのね。それどころか一つ一つが投げっぱなしジャーマン。「その後? そんなもん知るか!」という感じ。これがきっとロックンロールなんだな。そうに違いない。

 俺は好きだけど、これは正直人には勧められません。これは文章のリズムと垂れ流されるデタラメをニヤニヤしながら楽しむ本。興味があったら立ち読みして、それから読むかどうか決めたほうが良いでしょう。かなり好みが分かれるところだと思うので。

 読むと決めたなら、先に「ベルカ」を読んでおくと最終章の「ロックンロール第0部」でニヤリとできますよ。