猫にかまけて


 町田康の猫エッセイですよ。買うに決まってるじゃないか。

 かなり大雑把だが、世に出回る猫飼いエッセイや猫飼い漫画というものは全て同じことが書かれていると思っていい。例えば新聞雑誌の類を読んでいるとその上で香箱を組んで邪魔をする。例えば失敗をすると知らなかったフリで毛繕いなどをして誤魔化す。例えば障子を貼りなおした途端、メタメタに引き裂く。例えばスズメ、トカゲなどの「獲物」を半殺しで誇らしげに持ち帰る。飼い主、困る。エトセトラエトセトラ。
 猫好きはそれを「あー、あるある」ってな感じで共通体験として楽しむのだな。当然この本もその例に漏れるもんではないのだけど、そこは町田康。「クスリ」ではなくて「ドフ」とも「ボヘ」ともつかない得体の知れない吹き出し方を何度もさせられる。町田康の「猫語」訳の巧みさといったら実家の飼い猫までがそう言っているようににしか見えなくなる。というか、猫は実際そう言っているのだろうな。「小窓の断念」の項なんか最高だった。

 まあペットを飼うというのは楽しい事ばかりではなく。猫も生き物なんで、当然いつかは死んでしまうことは避けられないのだけれど、そのことも正面から書いている。読んでて辛くなってしまうが、これも猫飼いの共通体験。感情移入してしまって危なかった。

 これは多分また読む。